条件が揃えばできるが
制約が多いですが、条件が揃えば「余白なし」「フチなし」のデカールを作ることができます。
その条件とは、
①形状が複雑でないこと(鋭角でないこと)
②必要な形状が正確にわかっていること
(弊社には必要な形状がわからないため、カットパスデータの提供が必要です)
③はみ出した状態の絵を描画できること(写真印刷のフチなし印刷と同じ方法です)
追加で、以下の条件も追加できれば完璧です。
③貼り付けたい場所がポケット形状であること(角丸である必要はない)
カットデータをパスで作る時には元の形と100%同じものではなく、ウレタンレジンキャストに置換する場合は収縮率、置換しない場合も塗装膜の厚みなどを考慮する必要があります。本来の形状から-0.2mmから-0.3mmのマイナスオフセットが必要です。また、厳密に合わせるためには現物で微調整が必要です。
実践編です
標準コースの説明記事で扱ったコンテナのパーツです。記事で使用したものと天面以外はほぼ同じものですが、デカールを貼る部分を少し凹ませました。
緑色に表示している部分にデカールを貼る計画です。
Fusion360には図面書き出しの機能があるので、1:1で書き出してPDFに変換。Adobe IllustratorでPDFファイルを開きます。書き出したパスがバラバラに分かれている場合は、パスを手動でトレースし直します。必ずクローズパスになっている必要があります。
ピンク色の線のところでハーフカットをされます。ピンクの枠形状と、コンテナの緑色表示部分が一致するようにカットパスデータを作りますが、両方が同じ大きさだと貼り付けられないので、デカールの形状を内側にオフセットして調節します。使用する素材によって収縮率や個体差も考慮に入れてサイズを調整します。
印刷&ハーフカットをしました
いずれも同じ形状でハーフカットを入れています。
コンテナの上部だけ出力したものに貼り付けました。
何も貼り付けていない素の状態です。
左のデカールを貼ったもの。
透明余白の形とポケット部の形が同じにしてあり、余白を余白と見せない例です。
画像の薄水色の位置が余白=透明層の切れ目が来るため、端面が目立ちにくい仕組みです。
真ん中のデカールを貼ったもの。
下地の塗装色を周囲から透かせるデカールです。
右のデカールを貼ったもの。
全面ベタのデカールで、余白の透明層がないデカールです。
ポケット形状の凹みに貼るのが有効です。
今回の目的のデカールです。
スプーンに貼ってみます
スプーンに貼った例。当然のことながら形通りの余白が見えます。
一番右のフチなしデカールを貼った例。余白はないですが、同じ形状に凹みが合ったほうが見た目が良いです。
このタイプのデカールのデメリットは、量産対応できるところがないこと。一般的なオーバーコート式のデカール印刷の場合、余白が必ず必要なので余白が残ります。
また、カット形状は現物合わせで調整が必要なこと、細かなカットはできないこと、鋭角がある柄(星柄、ハートなど)は不可なことです。腕時計、スマートフォンの画面、液晶端末の画面の模型への使用実績があります。